〈音楽の国ドイツ〉の系譜学 3
芸術
吉田 寛(著)
A5判 336ページ 並製 定価 2600円+税 ISBN978-4-7872-7368-0 C0373 在庫あり
奥付の初版発行年月 2015年01月 書店発売日 2015年01月15日 登録日 2014年12月10日
19世紀ドイツは、ついに自他ともに認める〈音楽の国〉へと上り詰めたが、国家統一をめぐる覇権争いは〈ドイツ音楽〉の理念をも引き裂くことになった。「絶対音楽」をめぐる不協和音から近代ドイツのナショナル・アイデンティティが孕む捻れを照射する。
凡例 巻頭言 シリーズ「〈音楽の国ドイツ〉の系譜学」刊行にあたって 第1章 国民主義的音楽史の誕生――トリーストと十八世紀ドイツ音楽史 1 ヨーロッパにおける音楽史叙述の歴史 2 国民主義的音楽史叙述の成立 3 「考察」の歴史的背景――ドイツの南北分裂 4 『一般音楽時報』と教養市民層 5 十八世紀ドイツ音楽史とその三つの時期――「考察」詳解 第2章 〈フランス〉の変貌 1 「ドイツ人」対「新ラテン系諸民族」――フィヒテ『ドイツ国民に告ぐ』 2 形而上学と「ドイツ的なもの」――シェリングの学問論 3 「不倶戴天の敵」としてのドイツとフランス――アルントの愛国歌 4 フランスから見た〈ドイツ〉――スタール夫人の『ドイツ論』 5 ヨーロッパ音楽におけるフランスの凋落――イタリアとドイツの二大国時代の幕開け 第3章 進歩主義的音楽史観のなかの〈ドイツ〉 1 「ドイツ的」かつ「近代的」なものとしての和声 2 音楽美学の転回点としての一八〇〇年――ヘルダーの器楽擁護論 3 進歩主義的音楽史の成立――フォルケルの『普遍音楽史』 4 ロマン主義的な器楽の美学の登場――ヴァッケンローダーとティーク 5 「近代ヨーロッパ」を代表=表象する芸術としてのドイツ器楽 6 「進み続ける時代精神」としての音楽――E・T・A・ホフマンの音楽批評 7 ヨーロッパ音楽史の頂点としてのベートーヴェン――ヴェントの音楽史叙述 第4章 「ベートーヴェン・パラダイム」――ベートーヴェンと「ドイツ的なもの」 1 ドイツの「国民文化」としてのベートーヴェンの交響曲 2 「抑圧者」としてのベートーヴェン 3 「ベートーヴェン以後」と歴史の空白――音楽史の終焉? 4 「ベートーヴェン―ロッシーニ論争」の展開 第5章 絶対音楽の美学と〈ドイツ〉の分裂――音楽美学に見る南北ドイツの文化闘争 1 「絶対音楽」の美学はどこまで「ドイツ的」なのか? 2 ハンスリックの音楽美学に見る〈ドイツ〉と〈イタリア〉 3 ハンスリックにおける「ベートーヴェン以後」の問題 4 「絶対音楽の救世主」としてのブラームス 5 ヴァーグナー派によるハンスリック批判――形式主義・ユダヤ性・イタリア性 6 ブレンデルの音楽史叙述――「絶対音楽」の時代から「総合芸術」の時代へ 7 絶対音楽の美学とオーストリアのナショナル・アイデンティティ 参考文献一覧 第三巻あとがき 索引
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