哲学・宗教
河原 梓水(著)
四六判 408ページ 並製 定価 3000円+税 ISBN978-4-7872-1058-6 C0010 在庫あり
書店発売日 2024年05月14日 登録日 2024年03月07日
サディズム、マゾヒズム、フェティシズム、同性愛や異性装などのセクシュアリティをもつ人々が集った雑誌「奇譚クラブ」は、「その表紙に触れるだけでも戦慄が走る一種危険な雑誌」「戦後の裏文化の帝王」などと語られ名前だけは広く知られてきたが、雑誌の特色や内容に関する本格的な研究がなされてこなかった。 本書では、「奇譚クラブ」を含めた1950年代の戦後風俗雑誌7誌を全号通覧のうえ、類似雑誌の系譜・模倣関係を検証、「奇譚クラブ」の史料的特質とその重要性を浮き彫りにする。 吾妻新、沼正三、土路草一、古川裕子という4人の「奇譚クラブ」作家/思想家に着目する。戦後民主主義・近代化の潮流のなかで、サディスト・マゾヒストを自認した人々は、支配と暴力をめぐる欲望について何を考え、どう語ったのか。「家畜人ヤプー」「夜光島」などのポルノ小説やエロティックな告白手記から、主体性、自立、同意、愛をめぐる論点を取り出し、近代的な人間性をめぐる規範の限界をあぶり出す。
はじめに 第1部 史料論――戦後風俗雑誌研究序論 序 章 問題の所在と本書の視角 1 問題の所在 2 研究方法 3 時期区分 第1章 第一世代雑誌――「奇譚クラブ」「人間探究」「あまとりあ」 1 「人間探究」「あまとりあ」 2 「奇譚クラブ」 3 戦後風俗雑誌の共通点 4 「科学的」研究と当事者研究 第2章 第二世代雑誌と弾圧――「風俗草紙」以後 1 「風俗草紙」とその模倣誌たち 2 「風俗科学」 3 専門誌の価値 4 雑誌同士、執筆者同士の関係 5 弾圧と廃刊 6 弾圧以後――「裏窓」の創刊 第2部 善良な市民になる 第3章 病から遊戯へ――サディズムの近代化・脱病理化 1 サディズム・マゾヒズム概念の輸入と定着 2 フェミニストなサディスト 3 吾妻新によるサディズムの近代化論 第4章 〈告白〉という営み――セクシュアリティの生活記録運動 1 〈告白〉に対する二つの態度 2 〈告白〉とフィクションと真実 3 〈告白〉が描こうとしたもの 4 近代的主体になる 第5章 吾妻新と沼正三のズボン・スラックス論争 1 論争の経緯 2 ズボンの意義――村上信彦の女性論・服装論から 3 裏返しの拘束衣――ズボンの性的活用 補論1 作家の実名①吾妻新(村上信彦)――戦後の民主的平等論者の分身 1 テキスト比較 2 村上信彦にとっての吾妻新と「奇譚クラブ」 第3部 社会に抗する思想 第6章 マゾヒズムと戦後のナショナリズム――沼正三「家畜人ヤプー」 1 男性主義的エリート・沼正三 2 マゾヒズムと女性蔑視 3 理想郷 補論2 作家の実名②沼正三(倉田卓次)――『家畜人ヤプー』騒動解読 1 問題の所在 2 個人情報の比較 3 『家畜人ヤプー』騒動と共同筆名説 4 『家畜人ヤプー』騒動はなぜ起きたか 第7章 家畜の生と人間の身体――土路草一「潰滅の前夜」「魔教圏No.8」 1 「家畜化小説」の登場 2 最初の家畜、最後の家畜 3 小説の構造 4 家畜への道程 5 唯一の生 第8章 近代性を否定する――古川裕子「囚衣」とマゾヒストの愛 1 吾妻新と古川裕子 2 「夜光島」という思考実験 3 ユートピアの成立 4 マゾヒストの愛 5 近代性の要求と免罪 おわりに 初出一覧 あとがき
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