哲学・宗教
河原 梓水(著)
四六判 380ページ 並製 定価 3000円+税 ISBN978-4-7872-1058-6 C0010
書店発売予定日 2024年04月25日 登録日 2024年03月07日
サディズム、マゾヒズム、フェティシズム、同性愛や異性装などのセクシュアリティをもつ人々が集った雑誌「奇譚クラブ」は、「その表紙に触れるだけでも戦慄が走る一種危険な雑誌」「戦後の裏文化の帝王」などと語られ名前だけは広く知られてきたが、雑誌の特色や内容に関する本格的な研究がなされてこなかった。 本書では、「奇譚クラブ」を含めた1950年代の戦後風俗雑誌7誌を全号通覧のうえ、類似雑誌の系譜・模倣関係を検証、「奇譚クラブ」の史料的特質とその重要性を浮き彫りにする。 吾妻新、沼正三、土路草一、古川裕子という4人の「奇譚クラブ」作家/思想家に着目する。戦後民主主義・近代化の潮流のなかで、サディスト・マゾヒストを自認した人々は、支配と暴力をめぐる欲望について何を考え、どう語ったのか。「家畜人ヤプー」「夜光島」などのポルノ小説やエロティックな告白手記から、主体性、自立、同意、愛をめぐる論点を取り出し、近代的な人間性をめぐる規範の限界をあぶり出す。 【目次】 はじめに 第1部 史料論――戦後風俗雑誌研究序論 序 章 問題の所在と本書の視角 第1章 第一世代雑誌——「奇譚クラブ」・「人間探究」・「あまとりあ」 第2章 第二世代雑誌と弾圧――「風俗草紙」以後 第2部 善良な市民になる 第3章 病から遊戯へ――サディズムの近代化・脱病理化 第4章 〈告白〉という営み――セクシュアリティの生活記録運動 第5章 吾妻新と沼正三のズボン・スラックス論争 補論1 作家の実名①吾妻新(村上信彦)――戦後の民主的平等論者の分身 第3部 社会に抗する思想 第6章 マゾヒズムと戦後のナショナリズム――沼正三「家畜人ヤプー」 補論2 作家の実名②沼正三(倉田卓次)――『家畜人ヤプー』騒動解読 第7章 家畜の生と人間の身体――土路草一「潰滅の前夜」「魔教圏No.8」 第8章 近代性を否定する――古川裕子「囚衣」とマゾヒストの愛 おわりに