決定論/時間線の分岐/因果ループ時間SFの文法

時間SFの文法 決定論/時間線の分岐/因果ループ

浅見 克彦 著
A5判 248ページ 並製
定価:3000円+税
ISBN978-4-7872-9233-9 C0095
奥付の初版発行年月:2015年12月/書店発売日:2015年12月17日

在庫あり
200作品を超える時間SFを読み解き、タイム・トラベル、並行世界への跳躍、自己の重複などの基本的なアイデアや物語のパターンを紹介する。そして、物語のシニカルさやアイロニーを踏まえながら、時代感覚への批評性を秘める時間SFの魅力をあぶりだす。

版元から一言

H・G・ウェルズ『タイム・マシン』、R・A・ハインライン『夏への扉』、J・G・バラード『結晶世界』、P・K・ディック『逆まわりの世界』、R・シルヴァーバーグ『時間線を遡って』、J・フィニイ『ふりだしに戻る』、M・ジュリ『不安定な時間』、K・グリムウッド『リプレイ』、小松左京『果しなき流れの果に』、広瀬正『マイナス・ゼロ』――SF作品のなかでも時間SFは一大ジャンルを築き上げ、人々を魅了してやまない。また、時間のジャンプや時間線の分岐など、時間SFがもつ物語の基本構造は、映画はもちろんマンガやアニメなど、さまざまなメディアの作品でも「活用」されている。他方で、物語の時間や世界が複数化するため、わかりづらさやとっつきにくさを感じる読者も多いだろう。
本書では、古今東西で描かれてきた時間SFを200作品以上読み解きながら、基本的なアイデアと物語パターンを整理して紹介する。タイム・トラベル、タイム・スリップ、並行世界への跳躍、自己の重複、枝分かれする世界、ループし反復する時間……。作品がもつその独特の時間世界を理解したうえで、諸作品を深く読み込み、時間SFのシニカルさやアイロニーがもつ魅力を抽出する。
時間SFの物語に接したときのめまいや混乱、その向こうにある未来が裏切られ、事態が空転し、時間が停滞・凍結する感覚――閉塞感が漂う世界でそこから脱出し、あるいは状況を突破しようとする時間SFが、現代の時代感覚に確かな手触りを与える批評性を秘めている事実をあぶりだす。

著者プロフィール

浅見 克彦(アサミ カツヒコ)

1957年生まれ。和光大学表現学部教授。専攻は社会理論、社会思想史。著書に『SFで自己を読む』『SF映画とヒューマニティ』(ともに青弓社)、『響きあう異界』(せりか書房)、『消費・戯れ・権力』(社会評論社)、訳書にダニエル・ダヤーン/エリユ・カッツ『メディア・イベント』、マーシャル・マクルーハン/ブルース・R・パワーズ『グローバル・ヴィレッジ』、リチャード・ダイアー『映画スターの〈リアリティ〉』(いずれも青弓社)など。

目次

序章 時間SFと時代の感覚
 1 『タイム・マシン』とその時代
 2 現代の意識を引き寄せる時間論
 3 物語論の関心と現代のシニシズム

第1章 ジャンルを俯瞰する
 1 タイム・トラヴェルの物語
 2 タイム・スリップの物語
 3 並行世界へ跳躍する物語
 4 自己重複の物語
 5 時間の果てをのぞむ物語

第2章 タイム・パラドクスと決定論的世界
 1 連なる氷河のような世界
 2 愛による過去の改変――パラドクスの浮上
 3 タイム・パラドクスと happen twice 論
 4 決定論的な時間世界――時間旅行者をとらえる不可避の円環
 5 決定論への帰依と「救済」

第3章 時間SFとニヒリズム――価値意識の惑乱
 1 反復する時間世界――意味と価値の無化
 2 「枝分かれする世界」――価値の相対化と自由意志の無力
 3 因果ループの空虚――価値の真正さが失われゆく世界
 4 ニヒリズムの波紋――自らに懐疑を向ける物語

第4章 物語論としての時間SF――読みのシニシズム
 1 物語の「真実味」を支えるもの――リアリズムの陥穽
 2 時間SFにおける因果のパラレリズム――読みが支える意味の秩序
 3 種を露呈する手品――「読みの真正さ」の持ち分
 4 シニシズムの行方

終章 時間の味わい――感覚的な悦びをもたらすテクスト
 1 変異のなかで湧き上がる時間
 2 意識変調の異様――躍動と移ろいの感覚
 3 時間的な感覚の奥にあるもの――意味の向こうに想像される何か
 4 映像的なテクストの時間――共感覚の渦へと誘う物語

文献一覧

あとがき