ポスト・カタストロフィーの記憶破壊のあとの都市空間

神奈川大学人文学研究叢書 39
破壊のあとの都市空間 ポスト・カタストロフィーの記憶

神奈川大学人文学研究所 編, 熊谷 謙介 編著
A5判 370ページ 上製
定価:3400円+税
ISBN978-4-7872-3412-4 C0036
奥付の初版発行年月:2017年03月/書店発売日:2017年03月18日

在庫あり
フランス革命、世界大戦後のヨーロッパとヒロシマ・ナガサキ、関東大震災、9・11と3・11……。加害と被害、騒乱と破壊、壊滅と再生の現場としての都市空間は、「あの日のあと」=ポスト・カタストロフィーに何を残したのかを問い直す10人の論考と聞き書き。

版元から一言

フランス革命後のパリ、南北戦争後のアトランタ、第1次世界大戦後のベルリン、第2次世界大戦後のローマ、関東大震災後の東京、天安門事件後の香港、ワッツ暴動後のロサンゼルス、ヒロシマ・ナガサキの原爆体験、そして3・11東日本大震災による壊滅的な被害……。

革命と内戦、蜂起と襲撃、国家間の戦争と自然の荒ぶる力にのぞんで、加害と被害、騒乱と破壊、壊滅と再生の現場としての都市空間は、「あの日のあと」=ポスト・カタストロフィーに何を残したのかを、10人の論考とアーティストたちへのインタビューを通して描き出す。

災害がたえず起こり、分断が世界中に亀裂を走らせるいま、破壊の「あと」を具体的な都市表象から考察し、「都市を生きること」を問う新しい都市論。

著者プロフィール

神奈川大学人文学研究所(カナガワダイガクジンブンガクケンキュウショ)

   

熊谷 謙介(クマガイ ケンスケ)

神奈川大学外国語学部准教授。専攻はフランス文学・文化、表象文化論。著書にLa Fête selon Mallarmé. République, catholicisme et simulacre(L'Harmattan)、共著に『〈68年〉の性』『〈悪女〉と〈良女〉の身体表象』(ともに青弓社)、共訳書に『古典BL小説集』(平凡社)など。

目次

はじめに 熊谷謙介

序章 ポスト・カタストロフィーの都市とは何か――パリ、ニューヨーク、ヒロシマ、ナガサキ 熊谷謙介
 1 意味が重層する場――パリ、共和国広場
 2 「不在の反映」――ニューヨーク、グラウンド・ゼロ
 3 モニュメント、メモリアル、遺構、墓――ヒロシマ、平和記念公園
 4 現在進行形の廃墟――ナガサキ、旧浦上天主堂

第1章 禁域の効能――欲望喚起装置としての「内裏」と、古代都市平安京の消長 深沢 徹
 1 はじまり(傍点4字)としての遷都――『平家物語』の場合
 2 移動する都市の中心軸――『池亭記』の場合
 3 空洞化する平安内裏――『新猿楽記』の場合
 4 禁域としての私秘空間――『方丈記』の場合

第2章 瞬間と持続、暴力と審美化の間で――リスボン大震災からフランス革命に至る時期の廃墟イメージ 小澤京子
 1 崩落の光景
 2 永続と瞬間――廃墟をめぐる二つの時間性
 3 瞬間性と仮設性

第3章 「古きパリ」の誕生――フランス革命後のもう一つの都市再生 泉 美知子
 1 革命期のパリの破壊
 2 景観への新たな眼差し
 3 「古きパリ」の誕生へ

第4章 カタストロフィーを生き抜く――『風と共に去りぬ』スカーレットとアトランタ 山口ヨシ子
 1 スカーレットはアトランタと同い年
 2 鉄道から生まれ、鉄道とともに発達した町
 3 アトランタ陥落
 4 「フェニックス・シティ」とその人種問題
 5 『クランズマン』『国の創生』から『風と共に去りぬ』へ

第5章 パリは燃えているか?――パリ・コミューンの廃墟をめぐって 熊谷謙介
 1 火災とイコノクラスム
 2 「語られる」廃墟――文学者たちのコミューン
 3 「撮られる」廃墟、「売られる」廃墟
 4 都市の再生?――チュイルリー宮殿とサクレ・クール寺院

第6章 グロテスク・フォトモンタージュ・ニュービジョン――第一次世界大戦後ベルリンの視覚文化に見る都市と身体 小松原由理
 1 スペクタクルとしての第一次世界大戦
 2 都市情報紙からリトファス柱へ――ベルリン一九二〇年代視覚文化層を形成する十九世紀的土壌
 3 グロテスクという手法――ジョージ・グロスとオットー・ディックス
 4 フォトモンタージュという手法――都市と身体の部分化と再編成
 5 ニュービジョンという手法――都市の身体に内蔵されたカメラ・アイ
 6 再び消えゆく都市と人間の身体

第7章 〈関東大震災〉の記号学――秋田雨雀「骸骨の舞跳」をめぐって 日高昭二
 1 あなたも然んなことを信じてゐるんですか
 2 この顔を見て呉れ給へ
 3 何も知らされてゐない。また何も知ろうと思つてゐない
 4 骸骨よ、跳り出せ!

第8章 二十世紀ローマの二つのカタストロフィー(?)――モラヴィアが見たファシズムの崩壊とアントニオーニが見た「奇跡の経済成長」 鳥越輝昭
 1 Il conformistaと「正常さ」の問題
 2 『情事』と「奇跡の経済成長」

第9章 〈廃品(ルビ:ジャンク)〉からの創造――S・ロディアのワッツ・タワーとブラック・ロスアンジェルス 土屋和代
 1 サバト(あるいはサミュエル、サム、サイモン)・ロディアの生涯
 2 ワッツ・タワーを救え!――愛国者のアートとして
 3 舞台としてのワッツ
 4 ワッツ蜂起後――〈廃品(ルビ:ジャンク)〉からの創造

第10章 カタストロフィーを超えて立つ武術家の表象――天安門事件後の徐克(ルビ:ツイ・ハーク)と映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ 村井寛志
 1 天安門事件と徐克
 2 地域的英雄(ルビ:ローカル・ヒーロー)と国民的英雄(ルビ:ナショナル・ヒーロー)の間――『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』
 3 去りゆく者たちへの愛惜――『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地大乱』
 4 国家の中枢へ――『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地争覇』

第11章 三・一一後の記録・物語――小森はるか+瀬尾夏美インタビュー 聞き手:熊谷謙介