「意志」のゆくえ自殺の歴史社会学

自殺の歴史社会学 「意志」のゆくえ

貞包 英之 著, 元森 絵里子 著, 野上 元 著
四六判 288ページ 並製
定価:2000円+税
ISBN978-4-7872-3409-4 C0036
奥付の初版発行年月:2016年11月/書店発売日:2016年11月17日

在庫あり
厭世死、生命保険にかかわる死、過労自殺、いじめ自殺という4つの事例をもとに、20世紀初頭から現在までの自殺と社会をめぐる語りを跡づける。それを通して、遺族の悲嘆をよそに、自殺を能弁に語ってしまう日本社会の歴史的な屈曲を明らかにする。

版元から一言

日本社会では近年、年間自殺者数がピーク時で3万人を超え、いまも2万3,000もの人が亡くなっている。「自殺の予防」を目指して、2006年に自殺対策基本法ができたことも記憶に新しい。

近代では、自殺は個人の意志に基づいて選択する死として語られ、遺族の苦しみや悲しみを深めてきた。ただし現在では、自殺が自ら進んで命を絶つものでは必ずしもないことも、医師や裁判官によって主張されている。社会は、自殺を矛盾する仕方で受け止め、利用し、ときにやりすごしてきたのである。

厭世死、生命保険にかかわる死、過労自殺、いじめ自殺という4つの事例をもとに、20世紀初頭から現在までの自殺と社会をめぐる語りを跡づけ、同時にいま、メディアや警察の「現場」で自殺がどう扱われるかも浮き彫りにする。それを通して、自殺を能弁に語ってしまう日本社会の歴史的な屈曲を明らかにする。

著者プロフィール

貞包 英之(サダカネ ヒデユキ)

1973年生まれ。山形大学基盤教育院准教授。専攻は社会学、消費社会論、歴史社会学。著書に『地方都市を考える』(花伝社)、『消費は誘惑する 遊廓・白米・変化朝顔』(青土社)、共著に『未明からの思考』(ハーベスト社)、論文に「「戦後」という時代の同一性」(「ライブラリ相関社会科学」第8号)など。

元森 絵里子(モトモリ エリコ)

1977年生まれ。明治学院大学社会学部准教授。専攻は歴史社会学、子ども社会学。著書に『語られない「子ども」の近代』『「子ども」語りの社会学』(ともに勁草書房)、共著に『子どもと貧困の戦後史』(青弓社)、論文に「社会化論という想像力をめぐって」(「年報社会学論集」第22号)など。

野上 元(ノガミ ゲン)

1971年生まれ。筑波大学人文社会系准教授。専攻は歴史社会学。著書に『戦争体験の社会学』(弘文堂)、共編著に『歴史と向きあう社会学』(ミネルヴァ書房)、『戦争社会学の構想』(勉誠出版)、『戦争社会学ブックガイド』(創元社)、『カルチュラル・ポリティクス1960/70』(せりか書房)など。

目次

序章 「意志」のゆくえ 貞包英之
 1 自殺と「意志」の関わり
 2 自殺の「意味」
 3 自殺の理論の検討

第1章 自殺を意志する――二十世紀初頭における厭世自殺 貞包英之
 1 厭世自殺という謎
 2 自殺を診断する
 3 自殺を隠す
 4 厭世自殺を装う
 5 厭世自殺の衰退?

第2章 自殺を贈与する――高度成長期以後の生命保険に関わる自殺 貞包英之
 1 自殺の「貨幣化(ルビ:マネタイズ)」
 2 生命保険の変質と浸透
 3 贈与としての死
 4 エコノミーの変容

第3章 自殺を補償する――二十一世紀転換期の過労自殺訴訟 元森絵里子
 1 過労自殺という社会問題
 2 自殺の「意志」の現代的転換――精神障害と法的免責、社会問題化
 3 過労自殺の社会問題化――「過労死」から「過労自殺」へ
 4 過労自殺の法理論――過重労働→精神障害→自殺のリンケージ
 5 過労自殺の運用――曖昧化される社会問題化と精神医療化
 6 「意志」をめぐる布置の変化

第4章 自殺を予見する――現代のいじめ自殺訴訟と子ども・教育 元森絵里子
 1 いじめ自殺というスキャンダル
 2 いじめ自殺裁判の立論とその困難――損害賠償請求裁判というアリーナ
 3 自殺と学校の責任のミッシングリンク――予見可能性の壁をめぐる初期の攻防
 4 予見可能性の判断――判断基準のゆるみと維持
 5 下がる予見可能性の壁、揺るがぬ法規
 6 子どもの意志、教育の責任

第5章 自殺に対応する――さまざまな現場、無意識の協働 野上 元
 1 自殺の対応――「現場」に注目すること
 2 自殺に対処する――何が起こったのか
 3 自殺を判定する――これは自殺か
 4 自殺を報知する――誰に何をどのように知らせるべきか
 5 自殺対策を推進する――誰が誰を救うのか
 6 自殺対応の社会学のために

あとがき 元森絵里子