多様な人々を包摂する福祉社会と共生のリテラシー字幕とメディアの新展開

字幕とメディアの新展開 多様な人々を包摂する福祉社会と共生のリテラシー

柴田 邦臣 編著, 吉田 仁美 編著, 井上 滋樹 編著
A5判 184ページ 並製
定価:2000円+税
ISBN978-4-7872-3402-5 C0036
奥付の初版発行年月:2016年04月/書店発売日:2016年04月10日

在庫あり
日常生活に溶け込んでいる映像の字幕・キャプションは、合理的な配慮という側面からは福祉の分野で、コミュニケーションを促進するという側面からはメディアの分野で注目を浴びている。字幕がもつ福祉的・社会的な意義や経済的な可能性を提言する入門書。

版元から一言

無声映画のセリフ表現から始まった字幕表現は、現在ではテレビや動画サイトではもちろん、街頭や電車のスクリーンなどでも、テロップやキャプションとして私たちの日常に溶け込んでいる。また、聴覚障害や難聴をもつ人々や高齢者にとっても、字幕は情報にアクセスするための大切なツールである。
字幕・キャプションは、合理的な配慮という側面からは福祉の分野で、コミュニケーションを促進するという側面からはメディアの分野で、いま注目を浴びている。人を選ばずに包摂する柔軟な表現として、その価値が再発見されているとも言えるだろう。
本書では、博報堂と花王の協力のもと、キャプション付きのテレビCMを調査して、表現のあり方や障害者・高齢者の受容の実態を明らかにする。その成果に基づき、字幕がもつ福祉的・社会的な意義や経済的な可能性を提言して、「字幕の新時代」の可能性を照らし出す。

著者プロフィール

柴田 邦臣(シバタ クニオミ)

1973年、愛知県生まれ。津田塾大学学芸学部准教授、メディアスタディーズ・コース運営委員長、インクルーシブ教育支援室ディレクター。専攻は難聴児の情報メディア支援、障害と社会参加、社会学。共編著に『「思い出」をつなぐネットワーク』(昭和堂)、論文に「ある1つの〈革命〉の話」(「情報処理」第56巻第12号)、「それだけは、美しく切り出されてはならない」(「社会情報学」第3巻第2号)、「生かさない〈生-政治〉の誕生」(「現代思想」2014年6月号)など。

吉田 仁美(ヨシダ ヒトミ)

1977年、岩手県生まれ。岩手県立大学社会福祉学部専任講師。専攻は障害者福祉とジェンダー。著書に『高等教育における聴覚障害者の自立支援』(ミネルヴァ書房)など。

井上 滋樹(イノウエ シゲキ)

1963年、東京都生まれ。博報堂ダイバーシティデザイン所長、津田塾大学講師。専攻はダイバーシティとユニバーサルデザイン、芸術工学。弱視者に読みやすい文字、入居者に配慮した病院、途上国の貧困層向けの商品開発などの制作業務に従事、2015年カンヌ・クリエイティブフェスティバル審査員。著書に『〈ユニバーサル〉を創る!』(岩波書店)、『ユニバーサルサービス』(岩波書店)、『イラストでわかるユニバーサルサービス接客術』(日本能率協会マネジメントセンター)、共著に『巨大市場「エルダー」の誕生』(プレジデント社)など。

目次

はじめに――「字幕・社会・メディア」をめぐる冒険 柴田邦臣

第1部 「字幕・キャプション」の発見――課題設定と先行研究の整理

第1章 キャプション・合理的配慮・エンハンスメント――「字幕・新時代」の息吹にふれて 柴田邦臣
 1 課題の設定「字幕・新時代」の息吹
 2 仮説Ⅰ 字幕の必要性と量的拡大――「合理的な配慮としてのキャプション」
 3 仮説Ⅱ 字幕の可能性と質的深化――「表現の拡張としてのキャプション」

第2章 キャプションの現状と政策――字幕付きテレビコマーシャルの先行研究 井上滋樹/吉田仁美
 1 アメリカでのキャプションの歴史
 2 アメリカのキャプションとテレビコマーシャル
 3 日本の放送字幕について――行政のこれまでの取り組みから
 4 コマーシャルにキャプションを付けること――日本の現状と政策
 5 コマーシャルにキャプションを付ける――先行研究と現在の課題

コラム1 「障害」とは何か?――「社会モデル」とインクルーシブ教育 柴田邦臣

第2部 字幕・キャプションの現実――博報堂テレビコマーシャル調査から

第3章 字幕は、誰のものか?――キャプションのニーズ拡大 吉田仁美/井上滋樹/阿由葉大生
 1 調査の背景
 2 調査Ⅰの目的と方法
 3 キャプションの認知と意向
 4 高齢者と聴覚障害者の共通性
 5 高齢者――キャプションの潜在的なユーザー

第4章 字幕は、何のためか?――新しい表現技法としてのキャプション 柴田邦臣/歌川光一
 1 調査の概要
 2 コマーシャル表現とクローズドキャプション
 3 分析――キャプションの影響とその原因

コラム2 「キャプション研究」の社会調査――分析手法とそのねらい 阿由葉大生/柴田邦臣

第3部 字幕・キャプションの未来――考察と結論

第5章 〈近頃聞こえにくい〉高齢者と家族のテレビ視聴――字幕・キャプションと「リビングルームの平和」 歌川光一
 1 〈近頃聞こえにくい〉高齢者のテレビ視聴
 2 気になる家族の存在――「リビングルームの冷戦」
 3 字幕・キャプション付きコマーシャルへの期待?

第6章 字幕の評価とキャプションのリテラシー 阿由葉大生
 1 聴覚障害者の視聴デバイス利用
 2 クラスタごとのコマーシャル評価

第7章 難聴者のアイデンティティー 吉田仁美
 1 難聴者のアイデンティティー、障害の受容
 2 アイデンティティーによるキャプションの評価の差
 3 障害者の権利としての情報アクセス

コラム3 メディアとは何か?――コンヴィヴィアリティ・アクセシビリティ・リテラシー 柴田邦臣

第8章 結論 インクルーシブ・コンヴィヴィアル・メディア――福祉社会と共生のリテラシーのために 柴田邦臣
 1 「できないことができるようになると、世界が変わる」ことについて――本書の意味
 2 仮説Ⅰの検証――「合理的な配慮としてのキャプション」
 3 考察1 「合理性の規準」とインクルーシブな社会
 4 仮説Ⅱの検証――「表現の拡張としてのキャプション」
 5 考察2 「状況の定義」とコンヴィヴィアルなメディア

第9章 まとめ コマーシャルのキャプション付与に関する政策提言――インクルーシブでダイバーシティな社会の実現に向けて 井上滋樹
 1 字幕100年の歴史から
 2 誰のためのキャプションか?
 3 どのようなコンテンツに字幕が必要なのか
 4 情報の魅力について――コンヴィヴィアルなメディア
 5 文化の相互理解を進める字幕メディアの新展開
 6 コマーシャルの字幕付与に関する政策提言――インクルーシブでダイバーシティな社会の実現に向けて

補章 テレビコマーシャルのクローズド・キャプションによる字幕の有効性に関する研究――調査の報告と単純集計 柴田邦臣/阿由葉大生
 1 調査の目的と方法
 2 質問票調査の実施(調査Ⅰ)
 3 調査Ⅰの結果の概要
 4 対面インタビューの概要(調査Ⅱ)

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おわりにかえて 柴田邦臣