衝突と変奏のジャスティス

相関地域研究 3
衝突と変奏のジャスティス

谷川 竜一 編著, 原 正一郎 編著, 林 行夫 編著, 柳澤 雅之 編著
A5判 260ページ 並製
定価:2600円+税
ISBN978-4-7872-3401-8 C0336
奥付の初版発行年月:2016年03月/書店発売日:2016年03月30日

在庫あり
タイ、ベトナム、マレーシア、ラオスなどの宗教や食文化、住宅などを具体例に人々の営みをすくい取り、そこから価値判断や正義の衝突を調和する創造的な視点・エッセンスを抽出して、共存・共生する技法を見いだすためのロードマップを提言する。

版元から一言

世界各地での衝突や紛争の激化、社会問題の肥大化、そして解決策の模索……多様な問題に対して、私たち一人ひとりの世界観も大きな転換と刷新を迫られている。多様な価値観を背景にした各国・各人の「正義」の衝突を調和し、共存・共生するための技法を見いだすためには何が必要か。
タイ、ベトナム、マレーシア、ラオスなどの宗教や食文化、住宅などを具体例に人々の営みを丁寧にすくい取る。そして、そこから価値判断や正義の衝突を調和する創造的な視点・エッセンスを導き出す。
人々の、あるいは国家間の衝突を解決するためのロードマップや実践的な作法を提言する「相関地域研究」第3巻。

著者プロフィール

谷川 竜一(タニガワ リュウイチ)

1976年、大分県生まれ。金沢大学新学術創成研究機構助教。専攻はアジア近代建築史・都市史、文化資源の空間論。著書に『灯台から考える海の近代』(京都大学学術出版会)、共編著に『記憶と忘却のアジア』(青弓社)、共著に『岩波講座東アジア近現代通史別巻 アジア研究の来歴と展望』(岩波書店)、論文に「一九三九年、烏口の記憶」(「Mobile Society Review」vol.14)など。

原 正一郎(ハラ ショウイチロウ)

1957年、千葉県生まれ。京都大学地域研究統合情報センター教授。専攻は情報学。共著に『歴史GISの地平』(勉誠出版)、『ナチュラルコンピューテーション1』(パーソナルメディア)、翻訳書にM・ジェームズ『人工知能BASIC』(啓学出版)など。

林 行夫(ハヤシ ユキオ)

1955年、大阪府生まれ。京都大学地域研究統合情報センター教授。専攻は東南アジア民族誌学、文化人類学。著書に『ラオ人社会の宗教と文化変容』、編著に『〈境域〉の実践宗教』(ともに京都大学学術出版会)、共編著に『講座世界の先住民族・東南アジア』(明石書店)など。

柳澤 雅之(ヤナギサワ マサユキ)

1967年、奈良県生まれ。京都大学地域研究統合情報センター准教授。専攻は農業生態学、ベトナム地域研究。共編著に『京大式フィールドワーク入門』(NTT出版)、共著に『国境と少数民族』(めこん)、論文に「自然科学分野の地域研究」(「地域研究」第12巻第2号)など。

目次

プロローグ 設計的視座から紡ぎ出す相関地域研究 谷川竜一/原 正一郎/林 行夫/柳澤雅之

第1部 問題の場所から可能性の場所へ

第1章 モニュメントの読み解きからみる南米ペルー社会 村上勇介
 1 ペルー社会の来歴と現状
 2 モニュメント『涙する目』を取り巻く空間
 3 民政下の暴力というペルーの特異性
 4 『涙する目』の意味と民衆による記憶の仕方

第2章 都市で村の首長を作る――カメルーン、バミレケ首長制社会を支える人々 平野(野元)美佐
 1 バングラップ首長制社会とK首長
 2 九貴族と新貴族
 3 新首長を作る
 4 首長の葬儀と新首長の誕生
 5 Y首長と妻のその後

第3章 食と宗教――北タイに生きる中国系ムスリム 王柳蘭
 1 多民族状況の北タイ
 2 ハラールの実践と信仰
 3 喜捨と共食儀礼――断食月の多文化状況

第4章 ポーズとフレーム――フィリピンの国民的物語の身体化 山本博之
 1 多言語社会フィリピンの同胞意識
 2 リメークとリミックス――舞台芸能と小説
 3 トレースとパロディ――コミックから映画へ
 4 フレームとポーズ――テレビから路地へ

第5章 三・七五度の近代――旧朝鮮総督府庁舎からみる建築設計の歴史的可能性 谷川竜一
 1 朝鮮王朝時代の光化門付近
 2 ソウルの道路網の改変と朝鮮総督府庁舎の建設
 3 三・七五度の連結、保存、そして露呈
 4 力を行使/制御する場所

第2部 共存と調和の技法に向けて

第6章 産後の食物規制のオルタナティヴな捉え方――ラオスでの産後の食物規制の「生きられた経験」へのアプローチ 岩佐光広
 1 ラオスでの出産と産後養生
 2 産後の食物規制の実施内容と先行研究での捉え方
 3 食物規制をめぐる「生きられた実践経験」へのアプローチ

第7章 序列化する建材――インドネシアの恒久住宅 林 憲吾
 1 建物の恒久性
 2 植民地期の法令にみる建材の序列化
 3 戦後インドネシアにみる序列の継承

第8章 コロンボ(スリランカ)下町での地域学習塾開設プロジェクト――日常のデザイン行為から地域居住環境を考える 山田協太
 1 コロンボ下町の居住環境
 2 プロジェクトから紡ぎ出される下町の動態――地域学習塾開設プロジェクトのはじまり
 3 プロジェクトと下町との接続
 4 プロジェクトのつまずき――親族との接続不良
 5 プロジェクトの近隣への定着
 6 それぞれの夢の展開とプロジェクトの二転、三転

第9章 多様性から読み解く地域像――ベトナム紅河デルタの自然と人の関わり 柳澤雅之
 1 東南アジアのデルタを読み解く
 2 ベトナム紅河デルタの地域区分図
 3 主題図を重ね合わせる
 4 地域像の読み解き

第10章 生きている宗教と現代世界――東南アジア仏教徒社会からの考察 林 行夫
 1 二つの仏教――似て非なるもの
 2 慣行の仏教の日本仏教へのまなざし
 3 生きている宗教を伝えること――地域研究者の立場
 4 自文化中心の宗教と共存
 5 「概念」と「情報」の検証
 6 イスラームの憂鬱?

エピローグ ローカルからグローバルへ、グローバルからローカルへ 原 正一郎

索引