押井守は「大戦間期」あるいは「戦争と戦争の間の時期」の作家ではないか――。
この刺激的な仮説のもとに『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『機動警察パトレイバー2』『GHOST IN THE SHELL』『イノセンス』『スカイ・クロラ』といった押井監督の作品群をあらためて見つめ、読み込む。作家自身も考えていなかったようなつながり、表現するテクストそのものの無意識を探るための手がかりとして、日本の戦後思想や世界中の批判理論や思想、さらに井筒俊彦の宗教哲学やヘルマン・ヘッセの文学などに戦略的な「迂回」をしてみせる。
ポストモダン以降の文化や表現のとがった部分がモダンそのものに内在しているというプロセスを掘り起こし、閉塞する現実、滅びゆく日本の社会と文化に「抜けない棘」のようにはたらきかける批評の挑発。