佐藤 直樹(著)
四六判 256ページ 上製 定価 2600円+税 ISBN978-4-7872-3258-8 C0036 品切れ・重版未定
奥付の初版発行年月 2006年06月 書店発売日 2006年06月15日 登録日 2010年02月18日
精神障害者の犯罪責任を免除する刑法39条。その起源を刑法史に探り、「理性的な人間像」と対立する「非‐人間としての精神障害者」という問題性を指摘する。責任能力を認めないのは精神障害犯罪者を「人間」と見なしていないと批判して、39条の廃止を訴える。
はじめに──私がキレた理由 第1章 日本の責任能力制度──「生物学的」方法と「心理学的」方法 1 「生物学的」方法は生物学的か 2 裁判所がいちばんエライ 3 ほとんどが起訴前鑑定で責任無能力とされる 4 心神喪失者等医療観察法をめぐって 5 「犯行」がなくて「犯行時」が存在するか 6 犯罪は「つくられる」ものだ 7 フッサール現象学の「方法的独我論」とは 8 「刑法学説」のムナシサ 第2章 狂人は自分の病気によってすでに十分罰せられている──近代以前の責任能力 1 犯罪も刑罰もなかった時代 2 なぜ「結果責任」だったのか 3 ゲルマン部族法・ザクセンシュピーゲル 4 カロリーナにおける「内面」の発見 5 狂気はあたりを歩きまわっていた 第3章 「自由意思─理性的人間像」の成立──重商主義の時代の責任能力 1 テレジアーナ・ヨセフィーナ・プロイセン一般ラント法 2 刑法における「自由意思─理性的人間像」の成立 3 刑罰と労働が結びつけられた 4 精神障害者の「大いなる閉じ込め」 5 社会と刑罰から排除された精神障害者 第4章 純化する「自由意思―理性的人間像」──自由主義の時代の責任能力 1 「自由意思─理性的人間像」を必要としたのはなぜか 2 カント=フォイエルバッハと「犯罪と刑罰の等価交換」 3 フォイエルバッハのバイエルン刑法典 4 ヘーゲルの「価値的応報刑論」とは 5 ヘーゲル学派と諸ラント法 6 英米法におけるマクノートン・ルール 7 著者としての「メタ自己」の発見 8 露出する近代的主体の限界点 第5章 「あいだ」としての精神病──「生物学的」方法批判 1 身体疾患を「要請」されてきた統合失調症 2 「あいだ」としての精神病 3 精神病はメタファである 4 サズのダラム・ルール批判 5 近代における「因果関係」論の成立 6 心身二元論の陥穽 7 ホントに精神病が「原因」といえるのか 第6章 フィクションとしての「他行為可能性」──「心理学的」方法批判 1 責任非難の根底にある「他行為可能性」 2 日本には個人も意思決定も存在しない 3 フィクションとしての「他行為可能性」 4 「心理学的」要件は「内面」に存在するか 5 「心理学的」方法と精神異常抗弁廃棄論 6 責任能力論とメンス・レア 7 刑法三九条の廃止に向けて 第7章 日本の責任能力をめぐる判例──「了解可能性」という方法 1 日本には社会も権利も存在しない 2 「ゆるし」としての起訴便宜主義 3 「混合的」方法はタテマエにすぎない 4 心神喪失で無罪が認められたケース 5 完全責任能力となったケース
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